眼瞼下垂手術後のダウンタイムは、身体が手術のストレスから回復し、新たな状態に適応するための重要な期間です。
「眼瞼下垂手術を受けたいけど、ダウンタイムの症状が不安」「すぐに職場に復帰できるのかどうか知りたい」と思われているのではないでしょうか?
この記事では、以下を詳しく解説します。
- 眼瞼下垂の原因
- ダウンタイムの期間と症状
- 切らない眼瞼下垂手術について
- ダウンタイム中の生活の工夫
眼瞼下垂のデメリットについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
「眼瞼下垂手術のデメリットとは?デメリットが小さい施術方法も紹介」
1、眼瞼下垂とは
眼瞼下垂(がんけんかすい)とは、下記写真のように上まぶたが正常な位置よりも下に垂れ下がってしまう症状を指します。
左の写真は、瞼が間延びして眠たそうな目になっており、真ん中の写真のように、眉毛を上げて目を開こうとすると額のシワの原因になります。
また、右の写真のようにまぶたが黒目にかかり、その結果視界が狭くなってしまうのです。
この状態は、まぶたを開ける筋肉、特に眼瞼挙筋が弱くなることで起こります。
眼瞼下垂は、視野を狭めるだけでなく、頭痛や肩こりなどの身体的な不快感を引き起こす可能性があります。また、審美的な観点からも問題となり、自己評価や自信を低下させる可能性もあるのです。
以下は、眼瞼下垂手術の切開法と切らない眼瞼下垂における比較表です。
<眼瞼下垂手術>
手術の分類 | まぶたを切って行う「切開法」 | まぶたを切らない「切らない眼瞼下垂(真崎法)」 |
手術時間 | 約50分~60分 | 約40分~50分 |
ダウンタイム | 約2~3週間腫れのピークは1週間程度 | 約1~2週間腫れのピークは2~3日程度 |
仕上がり | 組織が完全に落ち着くまで3か月程度 | おおよその仕上がりは、約1ヶ月程度 |
術後の安定度 | 高い | 中程度 |
手術のリスク | 高い(腫れ、内出血など) | 低い |
※個人差による
眼瞼下垂について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
「眼瞼下垂とは?原因とよく間違われる症状から治療法までを詳しく解説」
2、眼瞼下垂手術後のダウンタイムとは
ダウンタイムとは、手術を受けた後、傷の周囲が完全に治って、まぶたの状態が落ち着きを取り戻すまでにかかる経過期間のことを指します。
仕事を持っている患者様の場合、「できるだけ仕事を休む期間を短くしたい」「できれば普通に仕事を続けながら治療したい」と考えるのは当然のことです。
しかし、ダウンタイムの長さは個人差があり、手術の種類や患者の体質、回復力によっても異なります。
そのため、患者様は自身に合った適切なケアと休息を取ることが大切になります。
(1)眼瞼下垂手術のダウンタイム期間
眼瞼下垂手術のダウンタイム期間は、「切開法」と「切らない眼瞼下垂」の場合で、異なります。
①切開法の場合
一口に切開法といっても、術式にも様々なものがあり、切開法の中で最も広く行われているのが、腱膜固定術(挙筋前転術)です。
腱膜固定術では、まぶたを切開し、緩くなった腱膜や、瞼板との接続が切れてしまった腱膜を瞼板に再固定します。
この手術によって、腱膜がしっかり瞼板に縫いとめられると、まぶたが開くようになります。
切開法の場合の、ダウンタイムは、手術の種類や個々の体質によりますが、おおよそ2~3週間程度とされています。
傷の状態によっては、3~4カ月のダウンタイムがかかることもあります。
②切らない眼瞼下垂の場合
切らない眼瞼下垂とは、まぶたにメスを入れることに恐怖を感じる患者様のために良い手法がないかと考えたものです。
切らない眼瞼下垂の特徴は、痛みがなく手術直後からの外出が可能なほど腫れも少ないということです。
切らない手術であるため、万が一お気に召さなかった場合には糸を外して元に戻すことができるという点もあります。
切らない眼瞼下垂の場合の、ダウンタイムは、切らないので傷あとが残らないことはもちろん、まぶたへのダメージが小さいので、大幅に短くなるといえます。
こちらも個人差はあるのですが、状態のよい人なら、手術の直後でも仕事をすることができ、メイクをすることは2~3日後から可能です。
お仕事をお持ちの多くの人は、週末に手術を受けて、月曜日には普通に出勤しています。
この期間は、手術による腫れや内出血が落ち着く時間であり、また、新たな生活リズムを身につけるための重要な時間でもあります。
(2)眼瞼下垂手術のダウンタイムの症状
眼瞼下垂手術のダウンタイムの症状も、「切開法」と「切らない眼瞼下垂」の場合で、異なります。
①切開法の場合
切開法の場合、ダウンタイムの症状として以下が考えられます。
- 腫れが引くまでに時間がかかる
- 内出血する
- ドライアイになる
- 視界がぼやける
- 目がゴロゴロする
それぞれ、詳しく解説します。
(ⅰ)腫れが引くまでに時間がかかる
眼瞼下垂手術後の腫れは、手術の影響で皮膚がむくんだ状態を指します。
これは、例えば寝不足や泣いた後のような感じと似ています。
まぶたは顔の他の部分よりも血管が豊富なため、手術後に腫れや赤味、内出血が起こりやすいのです。
しかし、その反面、腫れが引くのも早いため、強い腫れが起こってもそれほど心配は要りません。
腫れを引かせたい場合は、どのようにすることがいいのでしょうか。
以下に、詳しく説明します。
腫れを活かせるためにすること | 詳細 |
手術当日は、よく冷やす | 冷やすことで炎症反応が抑えられ、ダウンタイムが短くなる |
保冷剤をガーゼに包み、まぶたの傷口に優しく当てて冷やす | 炎症が抑えられ、内出血の期間も短くなる |
手術当日の入浴を避ける | 血管の拡張により血流が増加し、傷口からの出血が止まりにくくなる。また、長風呂や熱いシャワーを長時間浴びたり、湯船に浸かったりすると、血流が良くなり、炎症が悪化する。 |
(ⅱ)内出血する
眼瞼下垂手術後に内出血が起こることは、手術の一般的な副作用の一つです。
内出血は皮下に血液が溜まった状態で、青っぽく見えるため、「あおたん」とも呼ばれます。これは、まるで青あざができたかのような状態と理解していただければと思います。
内出血が起こる原因は、手術中に血管が傷ついて血液が周囲の組織に漏れ出るためです。
特に、まぶたは血管が豊富なため、内出血が起こりやすい部位となります。
内出血を早く引かせるために、当日はなるべく安静に過ごすようにしましょう。
腫れがある場合は、保冷剤等で目を冷やすと腫れが少し緩和されますが、冷やすのは当日から翌日くらいを目安にし、以降は冷やさないで下さい。
冷やしすぎると血流が悪くなり、結果的に治癒を遅らせる可能性があります。
(ⅲ)ドライアイになる
ドライアイは、目の表面が乾燥する状態を指します。
これは、眼瞼下垂手術後によく見られる症状の一つで、手術によってまぶたが開きやすくなるために起こります。
この状態を理解するためには、まず目の涙の役割を理解することが重要です。
涙は目の表面を潤滑に保つだけでなく、目の表面を清潔に保つ役割も果たしています。
涙が不足すると、目の表面が乾燥し、不快な症状を引き起こします。
ドライアイの対策としては、まず、処方された目薬を適切に使用することが重要です。
また、日中外出するときは、サングラスをかけると良いでしょう。
これにより、目がまぶしいと感じる症状を軽減することができます。
眼瞼下垂手術後のドライアイについて気になる方は以下の記事もご覧ください。
「眼瞼下垂手術でドライアイになる?目の表面の乾燥対策法も解説」
(ⅳ)視界がぼやける
眼瞼下垂手術後、視力の永続的な低下は一般的には起こりませんが、手術に伴う腫れや内出血の影響で、一時的に視界がぼやけることがあります。
理由は、まぶたの腫れによって眼球が圧迫され、一時的に視界の不鮮明さを引き起こすためです。
多くの患者様において、腫れが引くに従ってこの症状は数日~数週間程度で自然に回復し、視界が徐々にクリアになっていきます。
手術後に視界のぼやけを経験した場合は、慌てることなく冷静に対処しましょう。
視界のぼやけは、一時的なものであり、ダウンタイム中の腫れが徐々に引くにつれて改善されます。
しかし、この期間中は視力が低下する可能性があるため、運転や精密を要する作業は控え、目を過度に酷使しないよう注意が必要です。
また、カウンセリングや医師の指示に従い、適切なケアを行うことで、快適な回復をサポートできます。
(ⅴ)目がゴロゴロする
眼瞼下垂の手術後、目がゴロゴロするという症状が出ることがあります。
これは、手術で筋膜を糸で固定するために起こる現象で、まるで目の中に小石が入ったような感覚を覚えることがあります。
この違和感は通常1~2週間で自然に治まりますが、それ以上長引く場合は診察が必要なこともあります。
②切らない眼瞼下垂の場合
(ⅰ)ダウンタイムが短く、すぐに日常時生活に戻れる
切らない眼瞼下垂の場合は、まぶたを切開することなく、眼瞼挙筋を短縮することでまぶたの位置を調整します。
この方法の最大の利点は、ダウンタイムが非常に短いことです。
例えば、あなたが一日中働いているビジーウーマンであるとしましょう。
仕事を休む時間がないため、長期のダウンタイムを必要とする手術は避けたいと考えているかもしれません。
このような場合、切らない眼瞼下垂は最適な選択肢となります。
手術後すぐに日常生活に戻れるため、仕事や家庭生活に影響を与えることなく、眼瞼下垂の治療を受けることができます。
切らない眼瞼下垂手術について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください
「切らない眼瞼下垂手術(埋没式挙筋短縮)」
3、切らない眼瞼下垂(真崎法)手術後の経過
真崎法の手術後の経過は、他の手術方法と比較して非常にスムーズです。
真崎医院で「切らない眼瞼下垂」を実際に行った際の手術後の経過を写真付きで説明します。
(1)Aさんの術後5日までの経過
この女性は、コンタクトレンズ性眼瞼下垂です。
ハードコンタクトレンズを30年にわたって使用した事と加齢が原因により、重度の眼瞼下垂になっていました。
厚みのあるハードコンタクトを着けて、まばたきを繰り返したり、目をこすったりしていると、腱膜が瞼板からはずれて眼瞼下垂を起こしやすくなります。
この方の手術前の写真(術前)からも、重度の眼瞼下垂を起こしてまぶたが重くなっていることがはっきりと見てとれます。
表情も眠たそうで、どこか疲れたような印象を受けます。
眼瞼下垂がこのケースぐらい重度になると、その影響で視野もかなり狭くなってしまいます。
術直後には、 目が開き、眉毛の位置が下がって額のシワが消え、若い頃のような目に戻りました。
(2)Bさんの術後1ヶ月までの経過
こちらの女性は、コンタクトレンズ性眼瞼下垂です。
ハードコンタクトレンズを長い間使い続けたことによって、眼瞼下垂になっていました。
眼瞼下垂の多くは、まぶたの支持組織である瞼板から、筋肉につながっている腱膜がはずれて起こる腱膜性眼瞼下垂です。
ハードコンタクトレンズの長期使用による眼瞼下垂は、近年非常に増えてきており、同じタイプの患者様が、当院にもたくさんいらっしゃっています。
術後は、術前の眠たそうな表情が一変し、見違えるほど目力がアップし外見の若さも若く見えます。
より詳しく知りたい方は、切らない眼瞼下垂の症例写真をご覧ください。
4、ダウンタイム中の生活の工夫
手術後のダウンタイム中は、皮膚のケアが非常に重要です。
まぶたの皮膚はデリケートなため、優しく丁寧に扱う必要があります。
また、手術部位を清潔に保つことで、感染のリスクを低減することができます。
(1)ダウンタイム中の食事と栄養摂取
手術後のダウンタイム中、身体は自己修復に全力を注いでいます。
そのため、適切な栄養摂取は、身体を効率的に回復するために不可欠です。
食事は、身体が必要とするエネルギーと栄養素を提供するための主要な手段です。
適切な食事と栄養摂取により、身体は最適な状態で回復することができます。
以下は、ダウンタイム中の食事と栄養摂取の比較表です。
栄養素 | 効果 | 摂取できる食品 |
タンパク質 | 身体の修復と再生 | 鶏肉、魚、豆腐、卵 |
ビタミンCビタミンA | 傷ついた皮膚の修復と新しい皮膚細胞の生成 | 果物、野菜 |
鉄分 | 新しい血液細胞の生成と酸素の運搬 | 全粒穀物、肉 |
(2)ダウンタイム中のリラクゼーションとストレス管理
ダウンタイム中は、リラクゼーションが非常に重要です。
これは、身体と心がリラックスすることで、回復プロセスがスムーズに進むからです。
リラクゼーションは、以下のような自分自身を落ち着かせる活動を意味します。
- 読書
- 映画鑑賞
- 瞑想など
これらの活動は、身体のストレス反応を減らし、回復を促進します。
そして、医師の指示を厳守することが重要です。
これには、必要な薬の服用、適切なケアの実施、定期的なフォローアップのスケジューリングなどが含まれます。
5、まとめ
眼瞼下垂手術後のダウンタイムは、手術の種類や個々の体質によりますが、一般的には1~2週間程度とされています。
この期間は、手術による腫れや内出血が落ち着く時間であり、また、新たな生活リズムを身につけるための重要な時間でもあります。
ダウンタイム中は、適切なスキンケア、栄養バランスの良い食事、そしてリラクゼーションとストレス管理が重要です。
眼瞼下垂手術は、見た目の改善だけでなく、視野の拡大や頭痛や肩こりの軽減など、生活の質の向上にも寄与します。
しかし、手術を受ける前には、手術の種類や手術後のダウンタイム、そして手術によるリスクや副作用について十分に理解することが重要です。
そのためには、信頼できる医師と十分にコミュニケーションを取り、自分自身の状況に最適な治療法を選択することが大切です。
この記事が、眼瞼下垂手術を考えているあなたの参考になれば幸いです。